第564回 友里が考える「客が納得する店」とは その8ウリを何にするのかが問題

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  • 2005年2月24日(木)
飲食店に限りませんが、
客商売ではいわゆる「ウリ」を何にするか、
その方針によって成否が分かれるのではないでしょうか。
飲食店の場合、当然「料理」そのものが一番の「売物」ですから、
これが一番大事なのですから
力を入れなければならないのは当たり前です。
しかし、以前に述べたこともありますが、
飲食店は利益をうみだしてはじめて継続的に成り立ちます。
素晴らしい内外装の店構え、
高級食材をふんだんに使った手の込んだ料理を、
高級食器やカトラリーで供され、グランヴァンを飲みながら、
素晴らしいサービスの中堪能して、
一人当たり数千円で終わる事はあり得ません。
狙った客単価とのバランスで、
店構え、食材、調理方法、スタッフ、揃えるワインなどの
レベルを決めるはずです。
価格が安いのにすべてが高レベルの店を出せば流行るでしょうが
それではやっていけません。

内装などに特徴をだして、
変な創作料理を経験の少ないスタッフがレシピ通り造る
いわゆる「ダイニング」は、未だに健在です。
純粋に料理を味わう客だけならば、
とうに絶滅していると思うのですが、
まだまだこのスタイルを好む客が存在しているということです。
料理以外をウリにしているスタイルの店は他にもあります。
会員制、一見客おことわり、紹介制、といった
敷居を高くしている店。
普通はどんどん客が入るように敷居を低くすることを考えますが、
人間は天邪鬼というか、
その心理をついて逆の方法を「ウリ」にする店です。
断られる、なかなか行けない、となると
余計に行きたくなるのが人間の心理です。

しかし排他的な店で
私は傑出した料理に出会った経験があまりありません。
銀座にある会員制の和食など
よくぞこのシステムを考えたと感心しますが、
この店へもぐりこむ、
つまり何とかツテで入り込む努力をした瞬間に、
店側の思惑にはまってしまいます。
これだけ食べるのに苦労する店なのだから
「おいしいに決まっている」
といった先入観が、冷静な味判断を鈍らせます。
主人やマダムのやや高圧的な態度や
「おいしいだろう」
というお仕着せの口上も洗脳に拍車をかけます。
良くある鮨屋の「威圧感オヤジ」もこの手にはいると考えます。

相場とはかなりかけ離れた高額設定をウリにしている店もあります。
内容はさして変わらないまでも一般の高額天麩羅の3倍の店、
確かにおいしいが3倍も払わなければならないステーキ屋など、
こちらも
「これだけ高いのだからおいしいはずだ」
という先入観と、
「そこへ出入りできる自分はアッパーだ」
という客の自己満足を狙った戦術といえるでしょう。

夜景でうる、安さだけでうる、再開発ビルなど立地でうる、
盛り付けの綺麗さだけでうる、奇抜な内外装・スタッフ衣装でうる、
といった方針をとってくる店もまだありますが
これだけでは長続きはしません。
しかし、そこそこの料理でも、
客の自尊心とかプライド、スノッブ感に訴える「ウリ」は、
人の深層心理につけ込んだ商法ですので
うまく機能さえすれば長続きするようです。
本来は、料理自身と内外装、サービスなどとバランスする価格、
つまりCPで判断すべきところ、
店もそれを一番のコンセプトにしなければならないはずですが、
掟破りというか、料理以外で個人の満足感を求める客も
まだまだ多いという証左といえるでしょう。