第352回 花椒は特級品なのだが、趙楊 その1

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  • 2004年7月1日(木)
一つの店を評価するのに、
これほど何回も再訪問を繰り返し、
また比較の為同業他店を訪れることになるとは思いませんでした。
犬養裕美子氏が「Hanako」でとりまとめた
部門別グランプリ企画で、
中華部門一位に輝いた新橋の「趙楊」へは、
どうせ過大評価だろう、と気軽に訪れたのです。

店の都合で電話番号を掲載しないとあるのに、
店名は勿論、住所も明記されている矛盾。
行ってみるなりネットで検索すれば直ぐわかることで、
わざわざ電話番号を掲載しない意味はまったくありません。
雑誌を読んだ一見客が押し寄せるのがいやならば、
店名や住所も載せなければいいわけです。
いや、それならば、
雑誌の取材、掲載を拒否することも出来るはずです。
店の主人の集客を狙った姑息な戦略が読み取れてしまう、
つまり性格の悪い店主の料理店と予想されてしまうのです。

30席、ビニールクロスのテーブル、
床上に置かれたラジカセからのBGM、と
まったくの街場の中華の趣のなか、
この店のウリは5千円コースに出る
陳麻婆豆腐と汁なし担担麺です。
本場四川と同じという汁がない担担麺は、
単品ではオーダーできず、5千円以上の客単価を狙う
この主人のせこい性格がここにも現れています。

前菜は凡庸、唐辛子の香りをつけて揚げた鶏は、
今では珍しくもなく身も小さく貧弱。
エビチリも特に印象に残りませんでしたが、
やや辛めの汁なし担担麺は四川飯店でも注文できますが、
話のタネにはいいでしょう。

そしてこの店一番のウリの陳麻婆豆腐。
一口食べた瞬間、むせ返ってしまいました。
刺激性の香りが強烈でしたから
ある程度予想はしていたのですが、
私の人生で一番と言えるそれは強い刺激でありました。
花椒(ホアジャオ、四川山椒)が
皿に山盛りになっている訳ではないですが、
その香りは周囲に広がり、
その痺れは舌や口中だけではなく唇にまで広がってきます。
食べきるのに一苦労。

麻婆豆腐には花椒のほか、
豆鼓、豆板醤、唐辛子などの調味料が入っているはずなのですが、
辣(ラー)といった辛さの中にある旨みをまったく感じず、
塩味もない、香(シャン)と麻(マー)の痺れ感だけ。
すべて食べきれる客がそんなに多いとは思えません。

(明日へ続く)