第230回 夏以外の時期にはリピートしたい、山さき 神楽坂

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  • 2004年3月1日(月)
オーナーとしては若い女性シェフは、
電話での予約受付も一人で奮闘しています。
各コースの細かい説明要求にも嫌な声色をつかわず、
最後まで説明してくれる態度は好感が持てました。
年も場所も近い「小室」とはまったく対照的な対応です。

かなりの人気店のようで、キャパも少ないせいか
予約を取りにくいのが難点です。
コースは7千円が「寄せ鍋」と「鴨の巌石鍋」。
8千円が「ねぎま鍋」、
冬の時期はそれ以外に「ふぐコース」が1万2千円と
本家の「なべ家」の約半額です。
しかも、突き出し以外に酒肴やお造りもついていますから
本家と比べると破格に安い。
各コースで共通しているのが、
江戸風といわれる突き出しや造りです。
玉子焼きや、
海苔しぐれという梅を和えたものがこの店の定番です。
そして、ヒラメの造りにあわせる「炒り酒」も特徴があります。
江戸料理は甘みと梅味なのでしょうか。
玉子焼きやおひたしはかなり甘みを感じます。
また梅干を酒で煮詰めた「炒り酒」は、
ヒラメなど白身に合うかは別にして
1回は経験しても良いでしょう。

本家ではお通しのあと直ぐに鍋に突入しましたが、
この店のシェフは修行時から客の不満を感じていたのでしょうか。
価格を下げるだけでなく、何皿か酒肴を出すことによって、
CPの良さを演出してきております。

ただ惜しむらくは「お姉さん」。
なんと、このお年を召した着物姿の女性も
本家からヘッドハンティングしてきたようです。
ちょっとタイミングがずれる受け応えと、
すべてを仕切りたがる鍋奉行振りに、
ちょっと私は腰が引けてしまいます。
シェフと同じような年恰好の女性なら落ち着くのですが、
人件費の問題と考えます。

頼んだ「ねぎま鍋」にはぶつ切りのマグロが一人3切れ。
よく火を通したほうがおいしいと
ホール担当のお姉さんはとことん鍋底に具を沈めます。
もう一つの主役の葱の量が意外に少なく、
それをクレソンやセリで補っているのですが、
4人で一人8千円ということは総計3万2千円。
具の皿をじっと見て実原価を考えると、
破格に安い値付けと言われていますが
しっかり利益を上げているのではないと思ってしまいます。

なぜかワインの品揃えもあり、5千円前後と背伸びをしない安い、
CPの良いものが揃えてあります。
シャンパーニュが6600円だったことを考えると
ワインの値付けも安いでしょう。
お燗や冷酒もリーズナブルな価格で揃えており、
予算はかなりワインを飲んでも一人1万2千円。
汁ぶっかけご飯もついて、女性ならば満腹となります。

<結論>
この量、この味、この食材ならば
一人1万数千円はCPが良いと考える。
本家の「なべ家」があまりに悪すぎるだけに、
かなりイメージでは得しているでしょう。
この店を知ったら、高すぎる「なべ家」へ行く気がおこりません。
店に出す鍋を主体にした江戸料理で、2店の差はないと考えます。
夏の時期に鍋を食べに行く気がおこるかは別問題ですが。