第182回 安いけど評判倒れ、「小やなぎ」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2004年1月13日(火)
ネットのレビューや一部のガイド本で熱狂的に支持されている
麻布十番のふぐ専門店。
居酒屋がフグを扱ったのか、フグ屋が居酒屋風の店を出したのか、
とにかく店内は新橋などにある
養殖フグを扱っている激安店の様相を呈しています。
カウンターとテーブル席、
そして小上がりが1つの総数24~5名の狭い店です。

まず入店して驚くのはこの狭いホールが禁煙でないことです。
多くの客が喫煙者でした。
フグとタバコの煙、
最も避けなければならない取り合わせと考えます。
客層もどちらかというと
ネットでの人気を見てやってきた若い人や
地元の常連が多いようです。

コースは煮こごり、てっさ、から揚げ、鍋、雑炊かオジヤ、
香物、みかん1個で1万3千円。
これにオプションとして
12月前後から白子を用意しているようです。

煮こごり、ポン酢はかなり味が濃い。
酒が進むという許容範囲を越えていると思います。
その反面、肝心の「天然トラフグ」の刺身は、
街場の店と同じくかなり薄く切ってあり、
確かに養殖物との違いがあるかに思えますが、
私には傑出したものに感じません。
煮こごりの味付けが強すぎるのも逆効果と考えます。
「身が大きくてうまい」という「から揚げ」は、
トラフグ自体がかなり小さな物を、
そのままぶつ切って揚げているので、身が多く感じるだけ。
身の食べ応えはありますが、本来の旨みをまったく感じません。
鍋は可もなく不可もなく。
そしてオジヤ。
マダムは雑炊よりこちらを勧めますし、ネットでも絶賛の嵐です。
しかし、マダムが手間暇かけて造ったオジヤは
まったりしただけのもので、フグ雑炊として私が経験していた
滋味ある出汁の味わいをまったく感じません。
ポテンシャルの低いフグを使用しているとしか思えないのです。

マダムは勿論、主人も事あるごとに
「うちのフグはうまいだろう。最高だ」
「今まで食べていたフグとは違うだろう」
という言葉を投げかけてきます。
「トラフグって虎模様になっているんですか」と
真顔でマダムに質問している初心者客に、
このようにすりこんでしまって良いのでしょうか。

確かにサービス料も消費税もなし。
酒類もすべて安いのは事実です。
「うまくて本物のフグを提供しているから儲からなくて、
店の内装は何十年もこのままだ」と語りながら
オジヤを造っているマダムの左腕には、
ダイヤを装飾した金無垢と思われるロレックス。
かなりの価格と推測されますし、
通われている「六本木ヒルズ」のスパの
入会金や会費も半端ではないはず。
私はなんとも割り切れない気持ちで店を後にしました。