| |
第12回 予約しづらいシステムで集客を狙っている店 |
老獪な経営者は次々と集客を狙った話題造りを考え出すものです。今日は「会員制」や「紹介制」と称し一見客お断りの店を装っておりますが、飲食店宣伝雑誌「東京カレンダー」に大きく掲載された店を取り上げます。常連客や紹介客だけで運営したいなら、一見客が主要な読者である雑誌の取材を受けるのは矛盾であります。狙いは単なる「集客のための話題造り」。友里はどちらも一見客として初訪問することができました。
「喰切り 江ぐち」。神宮前で評判だった鼈を主体とした割烹が西麻布へ移転してきました。当初は住所や連絡先を公にしなかったようですが、最新の「東京情緒食堂」では「紹介者が必要」としながらも店データを開示してきました。私は雑誌で開示される前、西麻布1丁目付近を散策中、「会員制」と書かれた看板と共に掲示された電話番号を見(笑)、即予約を入れました。ワイン以外の酒類が飲み放題とはいえ、スッポン鍋と雑炊を主役に、時雨煮の先付けとトロ握り、その他小料理が3皿ついて3万円。鍋にフカひれを加えたら4万円です。価格は「さくま」並ですが鍋には肉がわずか1塊。滋味も感じずエンペラや肝も見当たりません。スッポンを丸ごと仕入れているとのことですが甚だ疑問。あらかじめ造り置いたスッポン鍋を客前で熱した小鍋に移し変えてくるだけですから有り難味もありません。
「竹慈庵 なかだ」。この和食店もデータを公開していません。しかし4月末までは、「東京カレンダー」を読んだ読者のために、メールでの予約を受け付けていました。氏名は勿論、連絡先から年齢まで申告すると、一見でも簡単に予約がとれました。松涛の住宅街にある2階建ての一軒家、富山のフレンチ出身の料理人、千一夜の営業で店じまい、といかにも「キワ物」で噂では「満寿泉」がスポンサーと聞きました。透明なトマト水につけたトコブシ、フォアグラの満寿泉漬け、レモンリゾット、干し貝柱とXO醤のカッペリーニなど「創作和食」の連続ですが、意外にも各料理は悪くありません。結構うまい。特に〆の「マスの燻製の炊き込みご飯」は癖になりそうでした。同じ創作和食でも「堀兼」や「かどわき」より食後感はかなり上です。しかし、小売5千円の「満寿泉」が2万円、ワインもレアや古いワインがありますが市場価格の4倍以上の値付けですから、最終的なCPはかなり悪い店であります。こんな無知な業界人向けの強気の価格設定では、経営者の常識を疑ってしまいます。