グルメバトル-前代未聞の飲食店評価
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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第10回 移転で延命をはかる、旬を過ぎた和食店

飲食店、特に料理人には「勢い」を感じる時期というものがあります。逆にその時期を過ぎ、世の流れからはずれた店は、残った常連客頼りの苦しい展開になるでしょう。一般客は移り気なものです。才能があっても長く飽きられない新メニューを考えることは難しい。よって以前は連日満席だった店が今や閑古鳥、といった光景をよく見かけるのです。今回は移転という目先の変化で再浮上を狙った和食店を取り上げます。
「菱沼」。私が最初に訪れたのは10以上年前でした。折からのワインブームに乗って「ワインに拘る和食」で繁盛していました。週刊誌の「上司に連れて行ってもらいたい店」特集で上位にもランクインしていた繁盛店。しかし、その後ワインを出す和食屋が珍しくなくなり埋没していたのですが、昨夏六本木への移転で狙い通りマスコミに取り上げられました。バブルの残骸のような派手なビルの地下。しかしビル全体に活気がありません。雑誌の影響か盛況な店内で私は紹介記事にあった「マツタケ尽しコース」を注文しました。結論から言わせていただくと予想通り食後感悪し。土瓶蒸し、細い焼き物、〆のご飯の3皿がマツタケでしたが、雑誌にあった「蒸鮑とマツタケ」がなく価格も2千円高い1万5千円の請求。造りの質も悪く出汁も並、ぱっとしない八寸や小さな照り焼きと、すべてが不満足。移転しても中身が変わらなければ再浮上は難しいでしょう。
「青山 えさき」。拙著ではかなり厳しく指摘した店。客はまばらで苦戦中のようですが、悪い食後感ではなかった。7皿コース(8千円)が基本でキンキの煮付けを1皿加えると1万円です。この価格を考えると、造り、お椀など傑出したものではありませんが、有機野菜を使い〆の豆ご飯まで量もあり悪くありません。極端にはずれたものもなく、京都在住の同伴者にも好評でした。キンキの煮付けもまずまずでこれがプラス2千円なら安いというもの。勘違いして高額路線に舵きりして閑古鳥になった西麻布の「田はら」では、この煮つけだけで8千円近くとりますが、たいした差は見出せません。1万円ではなく8千円を基本にした価格設定も見事。同じ価格帯である伊勢丹の「分とく山」とは雲泥の食後感です。ここ数年訪問していなかったのですが、料理の方向性を修正したと思われるメニュー構成となっておりました。わかりにくい立地がいけないのか、今のところ盛況ではないようですが、「菱沼」よりはまともです。

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