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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第3回 若い客が多い六本木、西麻布近辺の鮨屋

相変わらずの出店ラッシュですが、ピークを越え鮨バブルの終焉へ向かいだしたかもしれません。独立して客単価を高額鮨屋といわれる1万5千円以上に設定し、適度な質のタネを仕入れ、雑誌でチョイ紹介されれば、修行経験に関係なく客が殺到しています。夜でも「お決まり」を数千円で出す住宅街の寿司屋が集客に苦労しているのに、4倍、5倍の高額鮨屋が一杯なのですから異常といえます。「次郎」、「久兵衛」、「小笹寿し」など有名店ではない普通の街場の店出身、いや鮨屋での修行経験のない料理人でも、タネ質さえある程度のレベルを保てば、客が満足できる鮨を提供できるほど、鮨の職人仕事は底が浅いのかもしれません。今のバブルを支えているIT関連の若い客の存在も大きい。今回は若い客が多い六本木、西麻布近辺の鮨屋を取り上げます。
「きたむら」。雑誌ではマンション一室の店と紹介されていますが、星条旗通りに面した古い小さなビル4階。エレベーターから外階段を使わないと入り口へ行けません。主人は30歳チョイ。マンション鮨の先駆け、広尾の「すし家」に数年修行していた職人です。靴を脱いであがるカウンター6席と座敷1つの小さなキャパ。ハラスや鰆の炙り焼き、アン肝、蛍烏賊など江戸前鮨タネとは違うツマミが10種ほどでてから握りに入ります。
若い人相手だからか、酢飯は砂糖を感じる甘さが口に残ります。酢飯とやや強めに〆たコハダが合わない気がしますが、タネ質がまずまずで客単価は2万円弱。煮切りを含めた甘めの味付けが苦手でない若い客が多い鮨屋です。
「すし吉武」。六本木のかなり奥路地に入った隠れ家的な鮨屋。デザイナーが介在したと思われるアプローチは、雑誌では見栄えがいいですが実際はかなりチープな普請。店内は整然としていて気持ちいいのですが、ビールグラスが魚臭く興ざめ。主人の使う包丁類も光り方から見てステンレス製か。やはりアン肝(赤酢蒸し)、蛍烏賊、シロウオなど江戸前タネとは違うツマミと刺身の後に、甘い酢飯の握りが続きます。強面に見えるが気のいい主人に、店は小体でこの雰囲気。IT関係者など六本木族が好むものが揃っています。タネ質のレベルはまずまずで一人2万円超。握りの手際や〆などの仕事に傑出さを感じないのはこの手の鮨屋のお約束で、正統派江戸前鮨とは言えないでしょう。オタクや鮨好き向きではない、やはり若者向けの鮨屋であります。

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