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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第12回 東京の天然フグの店

一言で「フグ料理」と言っても、その質はピンからきりまで。大きく分けて天然、畜養(稚魚を捕獲して育てる)、養殖の3つですが、産地や種類について開示している店はあまりありません。豊後水道や瀬戸内西部のものが最高とされているのは最高級品であるトラフグ。業界では「シロ」とも呼ばれております。この他、トラフグに似ているカラスフグ(クロ)、そしてマフグなど「フグ」は数種出回っています。鮪と同じで、価格帯の違う店はこれらを使い分けているのです。また、同じトラフグにしても、味や仕入価格に大きな違いがある成魚ではない小振りで安価なものを出している店もあります。今週は東京の有名天然フグ店を客単価の安い順に簡単に述べていきます。
「小やなぎ」。ネットなどで大人気の麻布十番にあるお店。「さとなお」氏など業界人、ライターも絶賛で、白子焼を追加して、煮凝り、刺身、から揚げ、鍋、雑炊のフルコースでも2万円前後とかなり安い。しかし、私は何度食べてもこの店のフグが美味しいとは思えないのです。客の喫煙率の高さも凄い。刺身は質に自信がないからか、味、食感がわかりにくいよう、かなり薄くしています。から揚げは、こんな大きいもの見たことないと「純粋な読者」には人気ですが、本来は「中落ち」部分が旨いもの。大きなフグでもそうは身がなく、しゃぶってその旨さを味わうものです。この店はかなり小さなフグを丸ごとに近い形でから揚げしているので、肝心の身や骨回りの旨さを感じません。主人や女将が「こんな旨いトラフグは初めてだろう」と客を洗脳するのはいかがなものか。彼らは本当に質の高い天然トラフグを食べた事がないのではないかと私は考えます。「うまくて本物のフグを安く提供しているから儲からなくて、店の内装は何十年もこのままだ」と語りながらオジヤを造っているマダムの左腕には、ダイヤを装飾した金無垢と思われるロレックス。通われている「六本木ヒルズ」のスパの入会金や会費も半端ではないはず。私はなんとも割り切れない気持ちで店を後にしました。
「六本木 浜藤」。これまたフルコースに白子茶碗蒸し、白子焼までついたコースが一人21000円。ネットの評判も良いのですが、「小やなぎ」よりちょい上程度で、たいしたフグではありません。刺身は冷たい皿にこびりついていました。かなり前に盛ったのでしょう。白子は小さくなかったですが、皮が口に残るもので、質が良くない。最後の〆は、生米からのリゾットなのですが、フグの滋味を感じませんでした。低価格ということで評価に下駄履きがされているようですが、フグの質、調理技術のレベルが高い店ではないでしょう。

天然フグ店には、オフシーズンと言われる夏季を閉店にする店があります。
店関係者の年収を営業期間半年で回収するのですから、原価率は年中営業店よりかなり低くしなければ成り立ちません。旬に拘り、夏季に他の食材で営業しない店は割高と考えます。
「めうが」。赤坂小学校近くの居酒屋と間違える店構えのオフ半年休業店です。「みょうが」と読む、業界人に人気で露出の少ない店です。放送作家のすずきB氏が絶賛していたので訪問しましたが、裏切られました。一人3万円以上の高額店で、卓上には「紙オシボリ」。刺身は量が多いですが、何か添加しているのか、〆ているのかと思うほど不自然に濃い味。白子焼はレモンとポン酢がついてきます。から揚げにも揚出豆腐の出汁のようなものがついていて、衣自体にかなり味をつけている感じ。焼フグも赤い粉の入った塩が添えられています。肝心のフグ自体の味を隠蔽しているようです。雑炊は鍋を厨房へ持ち帰るので、どのような調理かわかりませんが、鍋よりかなり表面的な味が濃くなって帰ってきました。うーん、いかにも味のわからない業界人向けのフグ屋と納得、友里の再訪はあり得ません。
私がお勧めしたいのは、「銀座 福治」。白子焼を追加するとフルコース4万円前後になりますが、豊後水道のトラフグと明記したフグは悪くありません。刺身も身は厚めで、滋味というか余韻も感じます。そして、ここのから揚げは東京最高値の「味満ん」より旨いと私は思います。鍋、目の前で仕上げる雑炊とどれもレベルは高くバランスのとれた天然フグ店です。
今週は2回だけと紙面が限られているので残りの店はさわりだけです。
「赤坂 い津み」。本家は福岡の有名店。赤坂のラブホ街近くの掘り炬燵式個室だけの店です。客単価4万円前後、女性が鍋や雑炊などをサービスする料亭スタイルなので固定費がかかっているからか、「福治」よりCPは落ちるでしょう。
「やま祢」。銀座の料亭風フグ屋が、建て直したマンション1、2階部に、バブリーな内装で再オープン。白子焼を入れて4万円をかるく超える価格ですが、ホイルに乗った白子には驚きました。刺身はまずまず、から揚げは量が多いですが質に疑問。鍋は白味噌仕立てで量少なく、雑炊は白味噌ではない不思議。出汁はどうとっているのか。勿論雑炊は目の前では造りません。お勧めできない店の一つであります。
そして最後が六本木の「味満ん」。一人5万円前後と最高額の店ですが、刺身、から揚げ、白子、鍋、雑炊とどれもトップレベル。小料理屋の店構えですが、雰囲気を選ばなければ、「小やなぎ」を2回半我慢しても、話のタネにいいでしょう。

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