グルメバトル-前代未聞の飲食店評価
著:友里征耶/J.C.オカザワ
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集(2)
著:友里征耶
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集
著:友里征耶
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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第10回 流行の食材について(肉編)

牛肉の人気は相変わらずですが、ここ数年の銘柄豚の勢いも止まりそうにありません。トンカツ屋は勿論のこと、フレンチやイタリアンでもメインの食材として使われるようになりました。昔は鹿児島の「黒豚」、神奈川の「高座豚」くらいしかなかったと記憶していますが、今では全国で100以上の銘柄豚が存在しているようです。すぐ思い浮かぶのは、「白金豚」、「三元豚」、「桃園豚」、「梅山豚」、「アグー豚」など。しかしこれら銘柄豚が、実は一法人が生産している商標登録ものが多いということは知られておりません。かなりの範囲で出回っている「白金豚」、プラチナポークとも言われますが、岩手の高源精麦(株)という会社が、飼育配合から出荷まで一貫体制で生産している豚肉です。契約農家はあるかもしれませんが、松坂牛、神戸牛のような原産地呼称に近いものではないのです。同じく「梅山豚」は(有)塚原牧場、「桃園豚、三元豚」は平田牧場という会社の「商標登録」です。最近はどこのイタリアン、フレンチでもみかける「白金豚」。増え続ける需要に生産体制が追いついているのでしょうか。全国の「魚沼産のコシヒカリ」を合計したら、真の生産量の数倍になってしまうという疑惑がありますが、銘柄豚では生産側、料理店側とモラルを守ってもらいたいものです。「白金豚」を扱っている店はいくらでもあるのですが、私が最近行って面白いなと感じたのは六本木の「オステリア ナカムラ」。シェフとマダムの小さなイタリアンです。カウンターがあるので、オタクっぽい一人客でも入店しやすい。前菜やパスタが1700円前後、メインが2500円前後と安い価格ではありませんが、しっかりした味付けとボリュームにワインは5千円以下のものが主体。最近流行の「夜営業」だけになり、イタリアの地方色がでている料理ではありませんが、しっかり食べて飲みたい人、オタクなど一人客にも使い勝手の良い店であります。
「桃園豚」は平田牧場の直営である、コレド日本橋の「平田牧場」という店で、「三元豚」と共にトンカツなど各種豚料理が食べられます。高くて2500円くらいのトンカツ、千円以下のツマミ料理も充実していますので、人気は衰えていません。もう一店、私が食べた「桃園豚」の店が、江古田の「ラ リオン」。カフェも併設した、喫茶店のような内装のフレンチです。桃山豚など銘柄豚を使った千円台のパテや自家製ソーセージ、3千円前後のグリルやスネ肉コンフィなどは塩や香草をしっかり使ったもの。量はそれほどではありませんが、ビストロ的な位置づけで、近くの方や寄り道の範囲なら再訪したくなる店です。立地の割に混んでいるようなので、既に人気店かもしれません。

海外産の豚もかなりの人気であります。筆頭は「イベリコ豚」でしょう。イベリア種という黒豚の純血度が75%以上のものがイベリコ豚ですが、実はその中で3つのランクがあるのです。下から「ピエンソ」、「レセボ」、そして最上級の「ベジョータ」。よくイベリコは放牧してドングリを食べて増体した豚と説明されていますが、100キロ前後で放牧されてからドングリだけで50%増体できたものが「ベジョータ」。イベリコ全体のわずか1割で、ハモン(生ハム)でいえば、セラーノも含めてわずか数%と言われる貴重品であります。ドングリだけでは50%増体できなかった豚に飼料を与えて補ったものが「レセボ」、飼料を与えるだけで特別な飼育をしないのが「ピエンソ」です。価格はベジョータとピエンソでは倍近く異なるはずですから味わいも変わるというもの。身も濃厚ですが脂の芳醇さが特徴のこのイベリコ。ウリのドングリを食べていない安い「イベリコ豚」が実は料理店ではかなり出回っているのではないでしょうか。料理店には正直にこのランクを開示してもらいたいものです。スペインへ行ったとき、ベジョータの中でもう一ランク高いハモンを見つけました。標高700メートルにある「ハブーゴ村」産の物です。正確な原産地呼称ではないようですが、鮪の大間、鮑の大原みたいなブランドイメージだと考えます。スペインのバルでは、白豚から造ったハモン・セラーノから、イベリコのハモン・イベリコのランク別まで食べ比べられました。東京で流行のスペインバルでも選択肢を増やしてもらいたいものです。
イベリコ豚で直ぐ思いつく店は、「サンパウ」。今年3つ星になるのではないかと噂されるバルセロナ郊外の女性シェフの店で、元は夫婦で豚肉加工業をやっていたからか、食材に豚を使用したものが目立ちます。コレド日本橋の提携店は、バンケットに活路を見出しているようですが、外から眺められる1階の綺麗な厨房、本店と同じく清潔感があり覗いているだけでも時間がつぶれます。もう一つは西麻布のトンカツ専門店「豚組」。西麻布で居酒屋や立ち飲み屋を展開する「せいざん」グループの経営です。2千円の銘柄豚から最高峰がこのイベリコ豚4800円。旨みが増大する揚げ物に、濃厚で芳醇なイベリコを使う必然性を感じなかったのですが、食した結果はやはりかなりしつこいものでした。
輸入豚にはイタリア、トスカーナの「チンタネーゼ」という幻物もあります。扱っている店がないようですが、昔、広尾の「アッカ」でカツレツを食べた記憶があります。この店では、今シーズンは扱っていないと聞きましたが、豚ではなく冬場は「仔羊のスティンコ」がお勧めです。

和牛ではやはり根強い人気は「松坂牛」でしょう。確か、22市町村の限定された地域で、全国から厳選された優秀な但馬系統の仔牛(黒毛和牛)を肥育した未経産のメスのはず。処女牛しかないのですから、本物は高いわけです。神戸牛は三田、但馬、淡路など5地域で但馬産の仔牛を肥育した未経産メスのほか、去勢牛もはいると聞きました。マスコミで宣伝されている大田原牛は、大黒屋総本山という一法人の商標登録牛ですから、実態は月曜に述べた銘柄豚と同じようなもの。しかも、オス牛が主体のようですから、その能書きは眉唾ものと言えるでしょう。
銘柄牛はサシが多いですから炭火焼で食べたいものですが、味わいは別にしてパフォーマンス的に鉄板焼だと言われる方で、ホテルの店以外をお探しなら「銀座うかい亭」はいかがでしょうか。今をときめく「うかいグループ」の銀座店。場所柄一軒屋ではありませんが、入り口に置かれた大きなフォークとスプーンの人形に驚き、内装もケバいほど豪華。直営の牧場で肥育された「うかい牛」もやはり商標登録だと思いますが、ホテルと同じような価格帯で、家族連れや接待、同伴に向いています。私はこの店で初めて生産者名のついたフォアグラを食べました。アルザスなどの産地が銘打っている物は見ますが、最近の野菜や果物のように生産者名を出して差別化、付加価値を上げる戦略。残念ながらそこらのフォアグラとの違いがわかりませんでした。能書きに弱い業界人にも向いていて、話のタネに一回は許容範囲と考えます。
豚、牛と通年食する事が出来る肥育物ではなく、野生物、すなわちジビエも人気になりました。11月半ばの解禁日になりますと、フレンチやイタリアンでは、四足なら鹿、猪、野兎などがメニューの主役になります。最近は蝦夷鹿が増えすぎたとかで珍しくありませんが、ジビエの中では癖が少ない食材ですから扱っている店は多いようです。反面一番香りに癖が強いのが野兎です。嫌な匂い消すため、大量のニンニク、赤ワイン、フォアグラ、香味野菜などを使った煮込料理にし、野兎の血でソースを仕上げる「ロワイヤル」が代表的な料理です。赤ワインなくして食べられない典型的なフレンチでありますが、この料理をウリにしているのが、三鴨氏の「ル レストラン ド レトワール」。ワインをボトルで頼まないと客に食べさせないなどその営業スタイルに疑問の声を多く聞きますが、性格は別にして腕はかなりのもの。残念ながら恵比寿のこの店は1月一杯で閉店しました。現在、中目黒近辺で再オープンするべく店舗を検討中と漏れ聞きますが、一食の価値がある三鴨氏の「野兎のロワイヤル」。
再開を楽しみにしている常連も多いと思います。

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