グルメバトル-前代未聞の飲食店評価
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集(2)
著:友里征耶
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集
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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第8回  ソムリエをウリにするレストラン

日本で一番有名になった「元ソムリエ」は田崎真也氏であります。運が良いのでしょう、第3次ワインブームが再燃する時期に日本で「世界最優秀ソムリエ」のコンクールが開かれました。そこで開催地利得で白羽の矢が立ったのが彼だったのです。「世界一」の称号と一時的ではありましたが過熱ワインブームのおかげで、彼の人生は一変しました。一介の現場ソムリエから、ワインスクール、ワインバー、各種料理店からワイン雑誌までを運営する実業家と、TVコマーシャルやバラエティで稼ぎまくるタレントの2つの顔を持つ有名人。この10年でこれほど人生が変わってしまうとは、ホテル西洋銀座時代の本人には想像がつかなかったことでしょう。確かにワインについては専門家である事は認めます。しかし、ワイン本を乱発するだけでは飽き足らず、最近はフレンチ以外の和食にまで踏み込んだコメントを雑誌や本に発表しています。でもついこの間までは現役ソムリエだったはず。外食するにもそれほどの時間的余裕があったとは思えません。常連客との食べ歩きはこの種の人たちの役得ですが、まともに店に出ていたらその機会は限られたはずです。彼の飲食店への評価基準に独自性が感じられないのは、そんな理由があるのかもしれません。
田崎氏ほど有名ではありませんが、役職がかわって出世した元ソムリエは渋谷康弘氏と石田博氏でしょうか。両人とも、オープン時だけ話題になった、アラン・デュカスとシャネルのコラボレストラン「BEIGE TOKYO」で総支配人、支配人に就任しています。グランメゾンのなかでもかなりの大箱なので管理が大変でしょうが、支配人という管理職を2名も置く必要があるのか。オペレーションへの不満を未だに耳にしますから、管理職より優秀な現場スタッフの採用と教育に力を入れたほうが効果があると私は考えます。しかし経営側としては、有名ソムリエの「顔」が欲しかったのでしょう。もっと簡単に言えば、彼らの「顧客リスト」です。何百人、何千人のリストを持っていると噂され、能力に関係なく経験が長いだけで重宝がられて渡り歩く支配人がいるくらいの甘い業界であります。渋谷氏や石田氏に能力がないと言うのではありませんが、集客のための起用であることは間違いないでしょう。しかし、大事業家になった「元料理人」のデュカスは、日本を舐めているとしか思えません。「ベージュ」に限らず、2店目の青山「ブノワ」でも満足したという声を聞きません。集客も厳しいようで、有名元ソムリエを引き抜く前に、自身の考えを改め、客の食後感を満足するような価格とレシピを考え出す事が先決だと私は考えます。

今は埋没気味ですが、以前は東京のグランメゾンと言えば有楽町の「アピシウス」が一番に思い浮かんだものでした。グランメゾンは、豪華な内装など非日常感、高級食材を使った美味しい料理、そして安い値付けの高級ワイン、これらが必須であると考えます。当時、この3要素をすべて完備していたのが「アピシウス」でした。昔は主流だった重厚な内装、六本木ヒルズへ出店して苦戦しているが当時もっとも脂が乗っていた高橋シェフ、そして安い値付けでワインをサービスしていた有名ソムリエたち、これがアピシウスの魅力でした。その有名ソムリエが仲田勝男氏と中本聡文氏であります。
まずは年齢順に仲田氏。一昨年だったか、独立して銀座に「アルバス」というフレンチを出しました。小さなスペースながら、カウンターや奥にシガーを楽しめるスペースを用意している拘りの店とのフレコミ。彼の見立てによるワインを楽しめるということで、弁護士や医者といった「先生」系の間では人気のようです。私は料理自体にさほどのものを感じず、ワインもさして魅力を感じなかったので再訪は控えておりました。そろそろ再訪してみようかと考えていた矢先、ある雑誌での山本益博氏の下劣な自慢話を読んで思いとどまったのです。一般人とオレは違うんだという自慢のつもりだったのでしょう、確か60年代のDRC社の古酒に80年代の違うワインを混ぜて、違った味わいを楽しんだ、さぞや仲田氏もこの飲み方には驚いただろう、と書いていたのです。60年代のDRCの店価格は、10万円はくだらないもの。古酒ワインは瓶毎の熟成の違いをあれこれ考えながら楽しむものでして、千円前後で大手メーカーから売り出されているワインのように、ブレンドするものではありません。同じヴィンテージ、同じ造り手の同じワインでも混ぜ合わせる事をしないのがワイン愛好家の常識でして、マスヒロさんのこの自慢話は、ワインへの冒涜以外の何物でもない行為であります。私は失望しました。ワインが今ほど普及していない時からずっとソムリエとして頑張ってきた仲田氏なら、体を張ってこの勘違い自称料理評論家の暴挙を押し止めるべきだったはず。また、止められなかったとしても、その行為がどれほどみっともなく破廉恥なものかを説明するべきだった。ワインの常識のないマスヒロさんが誌面で自慢することは、彼の品位を更に落とすことになるからです。しかし、高名な自称料理評論家に雑誌で自分の店を取り上げてもらえる、宣伝してもらえるという事が優先したのでしょう。ソムリエではなくただのオーナーになってしまった仲田氏に私は魅力を感じなくなりました。

「アピシウス」で仲田氏より名前が売れていたのが中本聡文氏であります。多くのソムリエコンクールで優勝や上位入賞を勝ち取った若手ソムリエの憧れだった人。バックが「アピシウス」だったのもその選考に影響があったことは想像するに難くありません。「アピシウス」にいたからでしょう、シェフが交替して賛否両論ありますが、「ロオジエ」の移店再開時、シェフソムリエとして引き抜かれました。瞬く間に人気フレンチになりましたが、この店はワインの品揃えや値付けも悪くはありません。昔の「アピシウス」ほどではありませんが、客の嗜好や立場、性格を考えての中本氏の選択には納得するところがあります。常連が通い続ける、いや常連が増殖する店と言えます。
反面、有名な割にパッとした噂を聞かず、埋没気味なのが恵比寿の「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」であります。ピザーラという宅配ピザを多店舗展開している「フォーシーズ」が、高級路線にシフトをきったのか、サッポロやタイユヴァンと契約が切れたロブションと手を結んで、一昨年末、同じ場所で再開しました。ノウハウがない経営者のお約束として、この店も大物をスカウトしています。日本ソムリエ協会の副会長、剣持春男氏がフロアにいたのを見て私は驚いたのです。とっくに現役を引退していると思っていたからです。ワイン業界での顔の広さや顧客名簿などに期待しての起用であることは想像するに難くありません。しかし、協会の大物といっても、彼の経歴はホテル勤務が主体のはず。一応このレストランはグランメゾンですから、剣持氏の経験や顧客が100%生かせるかどうか、そこまで「フォーシーズ」は考えてはいなかったと思います。
若いシェフの造るロブション料理は、一皿一皿はおいしいものです。ただ、ロブションのスペシャリテを含めて、小皿で18皿も出す必要があるのか。最近は皿数の少ないコースや、3階では予算に合わせたお任せコースを出すように修正してきましたが、最初に客単価を上げる事を考え、高価格を客に納得させる為に皿数を増やすという安直な考えに私は疑問であります。「エルブジ」を認め、世に紹介したロブションが、そのコンセプトを真似てどうするのか。六本木ヒルズの「ラトリエ ロブション」もフォーシーズの経営ですが、シェフソムリエが辞める時、移転先の店を宣伝するためか名刺交換した顧客に、BCCではなくCCで案内をうってしまい、個人情報が流出したという問題がありました。高額路線を敷くならば、まずはコンプライアンスの確立に力を入れてもらいと思うのは、肩書きなど個人情報をあらわにされた客だけではないはずです。

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