グルメバトル-前代未聞の飲食店評価
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集(2)
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集
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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第6回  ワインの価格に無頓着な経営者と客が多すぎる

何回かのブームがありましたが、まだまだ一般に普及しているとはいえないワイン。一番の注目が「ヌーヴォー祭り」ですからレベルは低いといえるでしょう。まだまだ未成熟な日本でありますが、肝心のワイン先進国であるフランスでは、ここ数年ワイン離れが目立ってきたと言いますから、日本のワイン事情も今後が心配です。ではなぜワインが深く根付かなかったのか。海外の有名レストランが日本人をカモにするため、次々上陸してくるほどフレンチやイタリアンは浸透しています。しかし、そのフレンチやイタリアンに必須のワインが裾野を広げられないのは何故か。これには二つの理由があると私は考えます。
一つはワインが難解で高級な嗜好だと思わせる営業戦略の失敗です。日本で最初のワイン同好のサークルができたのは30年ほど前だと聞きましたが、当時ワインに手を出す方は一部の限られ方でした。業界が客層を限定し、一種のブランド化を狙い「ワイン=難解な高額酒」のイメージを植えつけてしまったのです。
そしてもう一つが、料理よりもワインの粗利に重点を置いている飲食店の存在です。経営方針の違い、つまり店によってワインの価格にかなりの差があります。ワインは最新ヴィンテージの主たるもの以外は希望小売価格が開示されていません。同じ生産地でも、造り手やヴィンテージによって
まったく別物になるからです。よって人気や有名ワイン評論家のコメントに左右され、需要と供給で相場が形成されます。
飲食店経営者やソムリエには、この相場価格に敏感でない人も多い。インポーターや取次店によってかなりの価格差があるのも事実です。高い仕入先から購入したワインを、相場価格が頭にない飲食店が値付けをすると大変な結果になるわけです。本業である料理の価格よりサブのワイン代が、数倍になってしまう矛盾がここにあります。
私はその店のワインの値付け姿勢を見るには、ノンヴィンテージのシャンパーニュのボトル価格を参考にするとよいと主張しています。クリュッグなど一部を除いて、だいたいそれらの仕入値は高くて3千円前後でしょう。3倍以上の1万円前後の値付けの飲食店はやり過ぎです。最近は6千円くらいで出している店もありますが、許容値は8千円前後でしょうか。同じく、白、赤ワインも相場小売価格の1.5〜2倍前後が私は適当であると考えます。これでも、仕入が小売の6掛け、7掛けですからかなりの粗利になるはずです。
今週は、ホテルはなぜワインの値付けが高いのか、
そして料理の評判も高いがついでにワインも高すぎる「トトキ」、反対に安い値付けの「ブルギニオン」などについて述べてみたいと思います。

ワイン好きには2つのタイプがあると思います。昔からのワインファン、すなわち比較的年齢の高い方たちと、この95年前後の第三次ワインブームでワインファンになった中年以下の方たちです。あくまで傾向ですが、前者はそれほど詳細なワイン知識をお持ちではありません。マルゴーなどボルドー1級やロマネ・コンティなど限られたワイン名、生産者名にしか拘らない方たちです。またワインの収集に興味がない方がほとんどですから、相場価格に無頓着なのは当たり前です。後者はワインオタクも含まれますが、自分でも買い集めてセラーで保管している人たちが多い。相場価格やワインの知識にも明るく、スクールに通ってエキスパートを受験する層でもあります。
では、ホテルレストランの主要な客層はどうかというと、新進気鋭の外人シェフで注目を浴びている帝国ホテルの「レ セゾン」や、コンラッド東京のロンドン3つ星分店「ゴードン ラムゼイ」は別にして、今さらホテルのメインダイニングへ自腹で行く、ワイン好きな食通がいるとは思えません。ニューオータニの「トゥール ダルジャン」やオークラの「ラ・ベル・エポック」などを熱く語る食通を私は見たことがないからです。各プリンスホテルは当然問題外。要は「ホテルのレストランにCPの良い店なし」ということで、自腹ではない接待族、前述のお年を召したワイン価格に無頓着な方たちが、ホテルレストランの主要な客層を形成していると考えます。昔ながらの安定した味、今の傾向とはかけ離れた、当時これが「フランス料理」だと紹介されたレシピで満足される方たちです。ワイン知識や価格に詳しくなく、ただ昔から飲んでいるだけの客や経費族が、ソムリエに相談してワインを選ぶのですから、ホテルは値付けに気をつかう筈がありません。最近ニューオータニのある店へ行く機会があったのですが、小売価格の3倍以上の設定に唖然としたものです。
しかし、ホテルだけではありません。料理に自信を持ちすぎているのか、独立したシェフの店でもべらぼうに高い値付けのワインを見る事があります。例えば「レカン」のシェフから独立した十時氏のフレンチ、「ル・ディタン ザ・トトキ」。銀座にある「カウンター主体」のフレンチです。食材、調理、盛り付けとバランスの良い料理で、高級食材を選ぶと1万5千円前後に加えて、ワインが無茶高い。しかし何も高級ワインだけを集めているのではありません。掛け率が高いからすべてが高額になるだけです。ブルゴーニュのただの村名ワインが軽く1万円を超えているのはホテル並みと言えるでしょう。こんな店が未だ存在できるのですから、日本のワイン業界は進歩しないのです。

グランメゾンと言うと、非日常感を与えてくれる高級レストラン。料理も高いしワインも高いはずだと思われるかもしれませんが、ワインはそれほど高くない店が多かったのです。以前一世を風靡した有楽町の「アピシウス」。当時は人気トップに君臨する高級フレンチでした。料理はそれなりの価格でしたが、ワインは当時の相場を考えても安い値付けだったと記憶しています。特に高級ワイン、古いヴィンテージのワインほど割安感を与えてくれました。この傾向は銀座の「レカン」とて同じ。新しい店の「ジョージアン」や「ロオジエ」にもいえますが、グランメゾンは料理やサービス料は高めですが、ワインは高く設定されていないのが一般的です。ホテルのレストランとは客層が異なると言うことでしょうか。本場のフランスでも、昔からの星付店では安い値付けに驚かされる事があります。市場価格より安い場合もありましたが、これは相場の上昇に関係なく、昔の仕入価格に対応する売値を守っているからだそうです。最近の3つ星店は、相場が上がってからの出店なので、古酒や格安のワインが見当たらないのは仕方ないかもしれません。フランスや日本のグランメゾンには、ワインでべら棒な利益を上げようとしない矜持を感じるのですが、粗利が料理より取れる可能性があるだけに、手っ取り早くワインで儲けようとする店が存在するのは残念です。私が当初より、ワインの仕入値や掛け率を具体的に開示しているのは、客側の毅然たる対応で、このような悪弊を駆逐し、これがひいてはワインの普及になるとの考えからです。
独立系の店で私が驚いた
ワインの安い店は、西麻布の「ル ブルギニオン」。オープンして5年はたつ、オーナーシェフのフレンチです。今尚客が途絶えない人気店であるのは、マスコミに露出しても自ら厨房に毎日入り続ける真摯さでしょうか。春夏時期は、換気と温度管理の問題からか、厨房の勝手口が開け放されるという問題点をもつ店でありますが、料理はシェフがつめていますから安定しております。そしてこの店のワインリストには驚くほど安いワインがあります。料理の傾向とシェフの嗜好なのか、ブルゴーニュが白、赤ともに充実しており、単なる量産メーカーだけではなく、通好みやカリスマ的な生産者のワインが安い値付けで載っているのです。30年、40年以上前のワインが驚異的な安値だったのにも驚きました。間違いかと我が目を疑ったくらいです。ホールのスペースが小さく若干閉塞感がありますが、料理も最高で1万円で終わる価格で、ワインを飲まれない方、ワイン通どちらも満足できる店でしょう。規模を考えたら、ワインの品揃えや値付けでも評価したい店であります。

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