グルメバトル-前代未聞の飲食店評価
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集(2)
著:友里征耶
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シェフ、板長を斬る悪口雑言集
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日刊ゲンダイ 連載コラム
   第2回   ミシュラン三ツ星レストランの日本進出

日本のグルメ人気は加熱一方です。雑誌でグルメ特集が次々組まれ、TVでもタレントを使ったグルメ番組が後を絶ちません。独立する料理人の年齢がどんどん若返り始め、最近では20代前半の店まで出現してきました。そんな一億総グルメの日本を「良いカモ」だと思ったのでしょう、ここ数年、欧州のミシュラン星付レストランが日本に上陸を始めてきました。
古くは10年以上前に銀座にでてきたフィレンツェの3つ星店「エノテーカ ピンキオーリ」。雑居ビルながらワンフロアを借り切っての豪華絢爛な内装と、ホールまでのアプローチにあるガラス張りのワインセラーには誰もが圧倒されるでしょう。本店はまったく普通の内外装ですから、これは日本人がゴージャス、ハッタリに弱いという習性を巧みに突いた戦略と考えます。当初は物珍しさもあり、富裕層や多くのグルメが殺到したようですが、星付レストランが東京で珍しくなくなってきた最近は埋没気味であります。いち早く日本に目をつけた先見の明は認めますが、オープンから時が経ちすぎて賞味期限が切れ掛かってしまったことは皮肉であります。
しかし誰もが東京などの大都市を狙っているわけではありません。2002年にオープンした北海道の「ザ・ウィンザーホテル洞爺」に、フランスはオーブラック地方の3つ星店というか世界的に有名なシェフ、ミシェル・ブラスの「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」が出店しております。
地元と同じような環境だとブラスが自ら洞爺湖を指定したとか。本店をクローズする冬季のはじめ、11月にブラス自ら主要スタッフを引き連れてのフェアは、かなりの人気のようですが、一度は訪れることをお勧めします。「ピンキオーリ」もそうですが、本店のシェフがいる時と普段では料理の出来が異なることが多い。本店は足の弁が悪くフランスへ行ってもなかなか立ち寄る事が出来ないだけに、11月の来日が貴重であります。数ある日本の星付レストランの中では、一二を争う創造性溢れる完成度の高い料理に巡り合えるでしょう。
そして、最近の大型再開発ビルには2つ星以下の店までが出店してきました。日本の多店舗展開会社と提携という形を取っている店が多いというのも特徴でしょうか。「イゾラ」などピッツァのチェーン店などを経営している「グラナダ」と提携した六本木ヒルズのイタリアン「サドレル」にコレド日本橋のスパニッシュ「サン パウ」。「レストラン ひらまつ」や「ASO」をチェーン展開しているヒラマツグループと提携の丸ビル「サンス エ サヴール」。しかしいずれもそれほどのインパクトを与えられず埋没気味なのは、提携店にとって大きな誤算ではないでしょうか。

ただ三ツ星店と提携すれば良いというものではありません。期待が大きいだけに、客の評価のハードルは高くなっているものと考えます。イタリアンに押され気味のフレンチとして一昨年末、そして昨年末、やはり世界的に有名な三ツ星店が東京にオープンしました。銀座の「ベージュ トーキョー」は多店舗展開で荒稼ぎのシェフというより経営者であるアラン・デュカスとシャネルのコラボであります。そして南青山に出たのが「ピエール・ガニエール ア トーキョー」。ガニエールも世界的に有名な3つ星シェフでありますが、両店での食後感はまったく違ったものになりました。店のコンセプトと経営戦略の違いが明暗を分けたのではないか。まずは、再訪したい食後感の「ピエール・ガニエール ア トーキョー」。
最高峰まで駆け上がったとうのに経営不振に陥り店を閉店、三ツ星を返上せざるを得なかったガニエール。失意のどん底にあったからか、極東の小さな島国のバラエティ番組「料理の鉄人」に出てきたときには驚いたものです。番組では全力を出したからか、日本人シェフとの格の違いを圧倒的に見せつけ、それがきっかけになったのか、見事パリで復活再開して再び三ツ星店になりました。そして昨年末に南青山へ進出してきたのです。キャパを抑えたのは正解。ビル最上階での借景をウリにせず、有名サービス陣を他店から引き抜く前に、肝心の厨房スタッフに力を入れたのが「ベージュ」との大きな違いであると考えます。ガニエールの元で修行したという、大阪で有名だったフレンチのオーナーシェフを3番手で採用するなど層の厚さにその意気込みを感じます。料理は多皿の変形版。コース料理もありますが、この店では前菜、メインとそれぞれ1万円以上しますがアラカルトがお勧めです。しかしアラカルトといっても2皿で終わるわけではありません。食前酒に合わせて5種ほどの一口アミューズ。肝心の食前酒のサービスが遅れ気味だったのは、オープン直後で慣れていないと考えても残念。その後、本当のアミューズが5皿並びます。前菜に頼んだフォアグラのテリーヌには、小イカ、エスカルゴ、トマトなどが別皿で供されます。どれも手をかけて調理しているようで美味しい。メインの豚のロティにも鮑やチョリソーなどの別皿が添えられ、一時期テーブルが皿で一杯になるなどオペレーションの問題が残りますが、基本の料理という点ではどれも完成度高く満足する味。前菜、メインの主食材のポーションが小さ目ですが、副食材で総量を充分カバーしていました。単なる数合わせの多皿料理ではなく、食後のフロマージュも必食です。この店を知ったら、もう「ベージュ」へは行けません。

「ガニエール」と明暗を分けているのが、デュカスとシャネルのコラボの「ベージュ トーキョー」。そこまで稼ぎたいのかと呆れるほど貪欲に多店舗展開で増殖を続けるアラン・デュカスが、舞浜のイクスピアリに出店した「スプーン」の失敗に懲りず、銀座にでてきて1年余り。週刊文春の「斬り捨て御免!食味探検隊」でも「こけっぷり」を書いていましたが、評判は芳しくないようです。
「スプーン」の失敗は、舞浜のイクスピアリがどのような場所であるかさえ知らなかったと何かのインタビューで弁解していたと記憶しておりますが、ディズニーとフレンチの融合は商売上手のデュカスといえども難しかったのでしょう。「ガニエール」との違いはキャパと厨房スタッフのレベルでしょう。撤退した舞浜の「スプーン」の元シェフや厨房スタッフには、この大箱は荷が重いのではないか。有名ソムリエを2名引き抜いて総支配人、支配人に起用していますが、1年近くたっての再訪でも、相変わらずサービスに改善はみられません。そしてそもそものコンセプトが間違っていないか。シャネルとの2大ブランドに胡坐をかき、一気に利益をあげようと、料理やサービスの質を落とすことになる大箱な店を選択。シャネラーとグルメ好きで黙っていても客が来ると箍をくくっていたようですが、
それほど甘いものではなかった。コースよりアラカルトがお勧めと言われて頼んだ単品料理も、見映えだけで満足感を持てませんでした。やはり料理店はスタッフが着ているシャネルの制服より、核である料理自体が傑出していなければならないということでしょう。
もう一店、友里が疑問に思っているのが恵比寿の「ジョエル ロブション」です。宅配ピザの「ピザーラ」などの多店舗展開会社「フォーシーズ」が、高級路線に転向するために手を結んだのが、タイユバンと提携契約が切れた、やはり有名な元三ツ星シェフ、ジョエル・ロブションでした。
宅配ピザ、多店舗廉価レストランの成功だけでは満足できなかったのでしょうが、高級レストランの運営に慣れていない経営陣のためか、今ひとつ評判が冴えません。若いシェフも才能があるようで出される料理は悪くはないのですが、客単価を上げるため18皿前後と多皿コースを採用したのが良かったのかどうか。「エル ブジ」を紹介したロブション本人が、そのマネをしてしまってはいけません。デュカスに触発されてか、ロブションも利益至上主義に切り替えているようですが、名誉を手にした身でまだ稼ぎたいものなのか。彼のレシピの料理は本当に美味しいだけに、黒いコックコートを着てカウンターフレンチの宣伝までする姿を嘆いているファンも多いと思います。

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