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2008年10月14日

「山本益博の厳選! 取り寄せごはん」

アマゾンで購入して目を通しました。感想をはっきり言わせていただくと、非常に安直につくった本。
カラー写真は使っていますが、150ページに満たない薄い本なのに1400円(税別)もかなり高い。内容も、「マスヒロコレクション」で宣伝しているものがかなりかぶっています。
「マスヒロコレクション」と同じく、業者から宣伝料をキックバックで貰うとしたら、印税との二重取りでかなり「美味しい出版」であると考えます。

巻末では調理器具なども宣伝紹介しているのですが、首をひねる説明文が気になります。
「Staub」の鍋のところで、この鍋を自宅では「グリル」や「ロースト」に使っているとありますが、本当かいな?
「いちぼ」を牛肉の「モモ肉」としていますが、「尻の部分」が一般的だと思います。

また得意の知ったかぶりというか、知識や経験の浅さも露呈。
「スクリュープル」というスクリュー式のワインオープナーの宣伝では、「古いコルク栓でも失敗はまずゼロ」と言い切っております。
この人、本当の古いコルクを開けたことがないんでしょう。スクリューを機械的に真っ直ぐ打ち込むことしかできないこのタイプでは、コルクがボロボロ、もしくは縮んで緩くなっているコルクは抜けません。ワインの中へ落下させて茶漉しで濾過して飲むことになります。
だいたいこのタイプは、スクリューの先がコルク栓を貫通するので、若いワインでもコルクの粉がワインに入る可能性があるんですね。デイリーワインでしか使えない代物です。

さて、「モウラ」に神楽坂の和食「小室」をアップしています。
最近はあまりマスコミに露出していませんが、有名で人気店の1つ。
ぜひお立ち寄りください。
http://tomosatoyuya.moura.jp/

2008年07月30日

読了、「右向け左の経営術」 by グラフ社

グラフ社から私とちょっと因縁のある株式会社グレイス(「豚組」や「豚組 しゃぶ庵」を経営している会社)の社長・中村仁氏の本をいただきあっという間に読み終えました。おそらくゴーストライターが書いていると思われるこの本、薄くて口語体なので非常に読みやすい物でした。
「右向け左の経営術」 副題「常識と戦え!」(グラフ社)
http://www.amazon.co.jp/%E5%8F%B3%E5%90%91%E3%81%91%E5%B7%A6%E3%81%AE%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%A1%93%E2%80%95%E5%B8%B8%E8%AD%98%E3%81%A8%E6%88%A6%E3%81%88-%E4%B8%AD%E6%9D%91-%E4%BB%81/dp/4766211669/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1217364501&sr=1-1

中村氏とは、「豚組」や「しゃぶ庵」をブログやコラム(日刊ゲンダイ)で取り上げた際、かなり長文なメールをいただき意見交換(言い争い)をしたこともあるのですが、そのときの印象と同じく、読み終えて感じたことは「この人、やっぱり頭が良くて弁が立つ」であります。
本では高校まで「成績優秀」と自ら著しているのはちょっと違和感を覚えますけど。
本の構成は、「せいざん」(居酒屋で現在閉店)を立ち上げ、立ち飲みブームの奔りとなった「壌」、イベリコ豚のトンカツで名を売った「豚組」、そして「しゃぶ庵」と次々オープンした「成功物語」を時系列的に述べたものであります。

中村氏はB型なのでしょうか。その性格がかなり私と共通しております。
まずはへそ曲がり。人と違うことを考える。新しい物好きで飽きっぽい。負けず嫌い。この二人がやり合えば、それはメールが長文になるわけです。
そして現在の飲食業界の問題点を冷静に認識している人。飲食業界の社会的地位の低さの改善(マスコミ露出の一部の人を除いて)を目指すという崇高なスローガンをかかげています。

確かにマスコミやライターのヨイショで祭り上げられた一部の料理人を除いて、この業界に従事している人の労働条件は悪すぎると言えるでしょう。労働時間、休日日数など「拘束時間」を考えたらその収入は見合わないのではないか。
また人と同じ事をやるより違うことをする方がリスクは少ない、という「逆張り」の経営判断、ある意味非常に納得しました。
すべての人が彼の考えを真似て成功するとは限りませんが、判断の引き出しを増やすという意味でも読んで損はないでしょう。(あっという間に読めるので、立ち読みできちゃいそうです。グラフ社さん、こんなこと書いてすみません)

しかし彼は長い道のりの中腹にもたどり着いていないかもしれません。成功したと行っても商売は水物、今後も盛況が続くという保証はどこにもありません。
また、発祥の店「せいざん」(最終店名は「豚組 やきや」)の突然の閉店もありました。厨房施設などに大きな問題が出たからという表向きの理由があるようですが、それならなぜ堂々とこの店の内装を設計した石川純夫氏のコメントを載せているのか。(29ページ)
執筆中に内装の問題が明らかになっているのですから、中村氏への賛辞だけではなく、自身の設計の甘さにも言及していただきたかった。10年持たず危険になったという設計で良いのでしょうか。

集客に苦労していたという「しゃぶ庵」も、先日訪問した際はかなり満席となっておりました。
果たしてこのままその勢いが経営4店で続くか、また新しい形態の店をオープンすることが出来るか、社員の労働条件を向上できるか、それは上場を目指すという2011年には少し答えが出ていると考えます。
グラフ社には出版社の矜持として、2011年以降に再度検証の意味で中村氏の本を出版していただきたいと考えます。
本日は友里征耶の生みの親、グラフ社の宣伝となってしまいました。
えっ、宣伝になっていないって?
これが友里流ですのでご勘弁ください。

2008年06月30日

「情熱のシェフ」読了

苦しい数日間でありました。「箸が進まない料理」というのがありますが、「ページが進まない本」とでもいうのでしょうか。大仰な美辞麗句だらけながらまったく引き込まれることのないその文章力、筆者に物書きの教えを請うてしまったら読者の数が激減することでしょう。
ここまで取材対象にのめり込んで取材対象者の口上を何ら検証せずに書いてしまう神山典士氏、タレント本を請け負う「ゴーストライター」のようなレベルに思ってしまいます。
彼は架空ではなく実在する人物を取り上げているので何を書いても「ノンフィクション」だと主張するのでしょうか。

ノンフィクションの読者がノンフィクションというジャンルの本に求めているのは、たんなる「事実」の羅列ではなく、「事実」の裏に埋もれてしまった「真実」なのだ。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BIJIN-8/fsyohyo/kak_band.html から引用した一文です。

この本は松嶋啓介という実在のフランス1つ星シェフの口から聞いた話を素にしている点は松嶋氏の話としては「事実」。しかし、何ら検証もせず矛盾する論調をそのまま垂れ流しているので、「真実」の追求はまったく見られません。

松嶋啓介、かなり上昇志向のある、そして出世欲ある人だと思います。若くして「多店舗展開」を目指す料理屋(敢えて料理人とは言いません)に真の客を喜ばしたいという志があるのでしょうか。
矛盾点やいい加減な発言が盛りだくさんなので、いくつか挙げてみます。松嶋氏の発言が「事実」なら彼の性格の一端、いやかなりの部分がわかると思います。

1、 僕がもし日本で店を出すなら、この一皿はつくりませんでした。

彼のスペシャリテ「牛肉のミルフィーユ ワサビ風味」の事であります。日本では鉄板焼き屋へ行けばもっと美味しい薄切りステーキが食べられる、日本人を相手にするなら本山葵でなければ納得しない、とうっかり言ってしまっていますが、神山氏は2006年春のフォーシーズンズホテルでの凱旋フェアで松嶋氏の料理を食べたのだろうか。しっかりこの鉄板焼き屋より美味しくない料理が出ておりました。
彼を有名にしたウリの料理なので、凱旋フェアには欠かせなかったのでしょうが、それなら本でのこんな高慢な発言、カットするべきでしょう。凱旋フェアに行った客を舐めております。
来年春に青山へ店を出すようですが、この鉄板焼き屋より美味しくない料理を出すのかどうか、見物であります。

2、青山とニース、同時に市場に行けないぜ

松嶋氏は毎朝市場へ出かけ、食材を見ながらインスピレーションを働かせてその日の料理を考えると言っています。市場に行かないシェフが多いと嘆いております。
読者に訴えるには非常にひびきの良い言葉ですが、本当にできるのか。青山店とニース店、半年ごとに閉店、開店を繰り返すとでもいうか。体は一つです。おそらく青山店を任せるシェフに築地へ行かせるのでしょうが、それでは松嶋氏のインスピレーション溢れる料理になりません。渡したレシピ通りにさせるのか、雇われシェフのインスピレーションに任せるのか。雇われシェフのインスピレーションでは「松嶋料理」になりません。
どちらにしても松嶋氏の発言に基づく料理は多店舗では無理であります。

3、調理場に籠もらずフロアへでる?

フロアで「メルシー」と言われることが一番嬉しいとゆうとりますな。
しかし、凱旋フェアでのランチでは、取り巻きや知り合いのテーブルしか回っていませんでしたし、最終ディナー(最終日の前日)では彼の姿が確認できなかった。せめて凱旋フェアの時だけでも厨房やホールに居てほしかった。色々と付き合いが多いから断れないのかもしれませんが、これから日本や世界へ展開する野望があるんでしょ。
だいたいニースと青山、同時に両方のフロアには超能力者でないかぎり立てません。

風呂敷がでかいというか、大言壮語の感がある松嶋シェフ。すぐに2つ星とるとか数年で3つ星だ、スペインへ出店する、とも言っていましたが、その後どうなったのでしょうか。

しかしこの若いときから商売根性丸出しの若人の発言を何の検証もせず垂れ流している自称ノンフィクション作家の神山典士氏。リップサービスの本場、欧州のシェフ達の松嶋賛美のコメントを取っていますが、ノンフィクションライターなら、就労ビザの取得の件で騙された、と松嶋氏が主張するエクス・アン・プロヴァンス(フランス人は「エクサンプロヴァンス」と発音するらしい)の1つ星シェフの取材とコメントを載せるべきではないか。ここまで立身出世の「大河物語」を作り上げるなら、裏もとっていただきたかった。

最後に。神山氏は友里に対し、ペンネームで安全なところからの批判は卑怯と述べていますが、私の実態は批判の対象になった店関係者はみなご存じのはず。勿論訴訟も受けていますし、料理人からの呼び出しにも、暗闇でなければ会う場合もあります。現に面と向かって脅迫を受けたこともありますし。ペンネームで陰に隠れて批判しよう、なんてケチなことはまったく考えておりません。訴訟や脅しが怖ければとっくに引退しております。

それよりあなたたち「実名ライター」の方がまったくリスクがないではないか。癒着本、ヨイショ記事、過大評価、店宣伝(料理人宣伝)ですから、百万が一にも訴えられるリスクがない。世に実力以上に褒めてくれた人に文句をいうアホがいるか。
この場合の被害者は一般読者であります。ひどい店、高慢な料理人を薦められたわけですから。しかし、一般読者は訴訟やクレームと言った面倒なことができません。「所詮食べ物」だからと泣き寝入りするしかない。
つまり、一般読者が訴えることが出来ないのをいいことに、ヨイショで過大評価して店宣伝している評論家やライター、本が出せそうな取材対象に寄生して一般読者の為にならない癒着本を出しているノンフィクションライターの方が私は卑怯であると思います。それを見越してヨイショ、宣伝、癒着を繰り返す彼らには訴訟や脅迫をうけるというリスクはなく、クレームなども想定外であるからです。
実名での過大評価、店宣伝に癒着本と、ペンネームでシビアな評価。一般読者には「店や料理人の手先の実名」と「一般客の目線のペンネーム」のどちらが必要か、まともな方にはご理解いただけると考えます。
http://www.the-bazaar.net/

でもこの友里のブログ読んで、この本買ってしまう人もいるんでしょうね。私も癒着本の宣伝に一役買ってしまいました。